第八回 小梅忌と和歌山市NPO・ボランティアフェスタ!

 

 今年も11月2日、小梅さんの命日に小梅忌を行いました。午前中はあいにくの雨となりましたが、集合時間ごろには傘を開く必要のない空になっていました。川合家の眠る堀止の妙宣寺に約30名が集いました。

 

 ご住職のご法話では「人の心の在り方」について伺いました。ともすると陥りがちな「修羅・畜生」の心を抑える努力こそ生きている間の修行であり、そうする事によって「菩薩・縁覚・声聞」の心が得られるのだそうです。目に見えないものこそ大切にし豊かな心になりましょう、自分の幸せより人の幸せを願う生き方ができるように、そして「いただきます」「こんにちは」と手を合わすことは言葉をかける相手の心の中にある仏様に手を合わすことである、とお教えいただきました。

 続いて、元新聞記者の渡辺圭司さんによる「「小梅日記」の東京デビュー」のお話です。

  学園紛争の時代に学生生活を送った渡辺さんは、大学卒業後、朝日新聞に入社、最初の赴任地が和歌山でした。1969年の秋のことです。同僚記者との「目指せ、一年以内の全国ネタ!」競争の中

「小梅日記」に出会ったのだとユーモラスにお話がはじまります。

 当時和歌山城の中にあった県立図書館の中島春三副館長には、度々ネタで助けてもらっていたとのこと。1970年の6月「先祖の遺した日記を読み下している人がいる」と志賀裕春さんを紹介されたそうです。中島副館長同行のもと志賀さん宅に取材に行かれ、志賀さんが鉛筆で仕上げておられた読み下し「小梅日記」を目にしてすぐに、その価値に気付かれたといいます。

 「幕末の武家の日常生活にとどまらず、噂話や聞き書きが多く書き留められ、しかもその描写の的確さはかなりのもの。たとえば坂本龍馬の暗殺のところでは、才谷梅太郎という龍馬の変名が正確に書かれており、夫である梅所がお城で得た情報がいかに妻の小梅に伝わっていたかがわかる。また噂話であっても、その背景にある社会的な問題にも言及している。」渡辺さんがその原稿を手に、ただちにその価値に興奮されたことがわかるお話しぶりでした。 

 当時『竜馬がゆく』で坂本龍馬が大ブーム、日記の中に龍馬が登場するので、司馬遼太郎ファンの支局長が乗り気になった、と渡辺さん。記事にお墨付きをと、渡辺さんがかつて在籍された東京大学の新聞研究所の恩師を頼り、史料編纂所の先生に見ていただくことになったとのこと。新聞社ならではのダイナミズムとスピードに驚きます。

 志賀裕春さんに原本をお借りしに出向くと、きっと迷っておられたのでしょう、たばこを燻らしながらしばらく考えられ、ついに「紙くずで終わっていたかもしれないもの。しっかりとした方に値打ちがあるか見てもらおう」と、幕末の数冊を風呂敷で包み、和歌山弁で「渡辺さん、頼んどかよ」と託してくださったそうです。

 こうして東京デビューを果たした「小梅日記」は、東京大学の史料編纂所で二人の先生によってその史料価値が高く評価され、渡辺さんの平凡社にお勤めのご友人から東洋文庫の編集者へと話が進んだ後、史料編纂所・村田静子先生の校訂による東洋文庫『小梅日記』全三巻が刊行されたのです。渡辺さんは「朝日新聞社、東洋文庫ともに方針が変化した時で、タイミングがぴたりとはまり幸運だった」と話されましたが、若き日の渡辺さんの奮闘があってこそ、私たちは『小梅日記』に親しむことができるのだ、その出会いこそ幸運であった、と感慨無量です。

 

 会場には、渡辺さんの記事を含む当時の新聞記事をパネル展示しました。当会では今後も機会があればこのパネルを展示したいと考えております。

 また、2003年に会員の大橋和歌子さんが書かれた「「小梅日記」雑感」を資料としてお配りしました。

 大橋さんのご主人 故・大橋正雄さんは元和歌山県知事。そのご在任中に日記が発見され、後に和歌山県に寄贈されます。知事が渡辺さんとお会いになったときに「小梅記者は君か!」とおっしゃったとのエピソードも渡辺さんから披露されました。(全体写真はメンバー紹介欄にあります) 


---***---***---

 11月7日(土) 第12回NPO・ボランティアフェスタに参加してきました。今年もブースで絵本を手に取ってもらおうという活動で、会員そろいの小梅Tシャツで和歌山市の北ぶらくり丁にて3時間陣取ってきました。中央の舞台ではけん玉をはじめ、魅力的な出し物が演じられていたのですが、私たちの場所からはやや遠く、時々交代で見にでかけました。昨年はきいちゃんが登場してくれましたが、国体が終わってちょっと休憩なのかな、今年はリサイクルのリリクルちゃんが来ていました。副市長さんに『小梅さんの日記』を購入していただきました♪

  会場でちょっと嬉しいことがありました。隣のブースの方が私たちの絵本を見て「湖西の熊川宿だったと思うが、この絵本置いてあるの見たよ」と声を掛けてくださったのです。絵を担当してくれた芝田浩子さんが、そこにも置いてきてくださっていたのでした。  <写真は芝田さん提供>

 年内の活動は12月に忘年会を残すのみ。

また来年、会員以外のみなさまとお目にかかる機会を楽しみにしています!!